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何度でも、生まれ変わる。

by tokiohayley

金曜日、相変わらず人通りの多いお昼時の東京駅。金曜日の午後なんて、仕事する気になれない。いってしまえばもう週末じゃないか。そんなことを考えながら約束の場所へ向かい、約半年ぶりに知人とランチをした。「普通のOLになった。」------- あの指摘は自分としても納得感のある、思い当たるものだった。決して嫌な気持ちはしなかったし、むしろうれしかった。知人は通称、「大家さん」。

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大「あれ?綺麗になった?」
私「だといいのですが。前回よりも、少し痩せたかもしれません。」

大「なんというか…悪い言い方をすると、そこら辺の年相応の何も考えていない普通の人になったよね。俺の思う、普通のOLって感じだよ。」
私「それは嬉しいですね。以前はどうでしたか?」
大「平たくいえば今より暗かったかな。暗い、というか、何か背負っちゃってる感じ。良いものか悪いものかはわからないけれど、何か抱えているような感じだったよ。」
私「おっしゃる通り、近頃は何も考えないようにしているんですよ。」
大「きっと、一皮むけたんだね。脱皮だ。」

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彼の指摘通り、いままで抱えていた限りなく黒に近い灰色の靄が私の頭の片隅に居座っていたし、いつもどこか息苦しい感覚があった。年を重ねるにつれて少しずつそれが晴れていったように思う。最初は黒、そのうちだんだん色が薄くなって灰色に、いまでは限りなく透明に近い白。最初はもっと、ものすごく重たくて、実際にみぞおちのあたりにずしんと重さを感じるほどだった。親との関係、対人関係、恋愛、仕事などたくさんの事柄や人との接触・経験を通じて自分を見てきた。自分が本当は何を欲しているのかわかってきたし、信じること、愛することがどういったものなのかなんとなく分かってきた。


10代の頃からもうすぐ30歳になろうとしている今日まで、不安や孤独、虚無感が幾度となく私を襲ったし、10代、20代前半までは特に常にそうした苦しみを抱えていた。無視しようとしても、無視することができない。嫌なことを忘れたくても忘れられないような出来事が断続的に発生する。楽しいこともたくさんあったし、友人にも恵まれたが、家族との問題は常に付き纏って私を放してくれなかった。


誰といてもいつも寂しくて、友人や恋人と居ても楽しい気持ちと不安が同居している状態が続いていたが、いまは素直に楽しいと思える。明日を想像して怖くなることもないし、何があってもきっと乗り越えていけると信じている。不思議なことに、この後の人生は今までよりも、今よりもずっと楽しく、どんどん良くなっていくだろうという感覚がある。少しずつしかし確実に、私の人生は良くなってきたという実感があるから。これまで私という一人の人間は一つの人生を生きてきたが、何かを乗り越えるたびに生まれ変わってきたのかもしれない。そしてそれはきっとこれからも続いていくし、そんな風に生きていくんだと思う。


これといって何の特技もない、褒められるようなこともあまり出来なかった。ただ、どんなに悲しみに暮れて絶望して、何もかも信じられなくなっても何度も立ち上がってしぶとく生きてきたし、諦めなかった自分を肯定したい。死んだってよかった。でも、敢えて生きることにした。たまたまこの人生を生き続けることになり、何度も生まれ変わり「新しい私」が一つの命を繋いでいっている。そしてこの肉体が滅びるまで同じような要領で続いていく。過去の暗いあれこれを一つずつ断ち切ってきた結果、たまたまいまは過去を引きずらずに済んでいるのかもしれないけれども、引きずられまいと意識して"何も"考えないように努めているのも確かだ。


夏の終わり。良く晴れた穏やかな日曜日の夕暮れ。まだほんのり暑さが残るが、時折通り抜ける風が涼しくて心地よい。いまでは、この平穏な日々を邪魔するものは何もない。


tokiohayley
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